出戻り知財業務雑感

10ン年ぶりに企業内の知財業務に出戻りました。仕事の徒然で感じたことを中心に綴ります。

ワープロとエディタ

最近、知財系SNS「ipippi」でどなたかの日記で紹介されていた本を買って読んだ。
エンジニアのためのWord再入門講座 美しくメンテナンス性の高い開発ドキュメントの作り方エンジニアのためのWord再入門講座 美しくメンテナンス性の高い開発ドキュメントの作り方
(2008/05/22)
佐藤 竜一

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別にエンジニアってわけではないが、ワードでドキュメントを作る機会は多いので、参考になる。その中で、スタイルを定義して使うことが推奨されていて、以下のような弾劾があった。

15年前のワープロならいざ知らず、現代では、「選択した領域のフォントを手で変更する」「ルーラーで個別にインデント付けを行う」といった方法でドキュメントを作成するというのは、職務怠慢に等しい行為だといえます。


特許の明細書は、ひたすらテキストで、それをHTML化してオンラインで出願する。なので、作成に使うのはワープロである必要はまったくなくて(何しろ「見栄え」というものがないから)、実際私は作成にはワープロではなくてエディタを使っていた。クライアントとのやり取りに修正履歴を使うように指定されて、完成原稿をワードに貼り付けておくっていたものだ。

このため、私のワープロ使用歴というのはほとんど前職の会社のもので、そりゃ↑にいわれるように、15年前のワープロなんだよね。Wordの日本語化がはじまったばかりで、英文ワープロにWordperfectを使ってた時代。その頃からアウトラインや相互参照は使っていたが、ワードとワードパーフェクトは構造がずいぶん違っていて、Wordに移行したときにそのあたりを考えて文章を作ることを断念してしまった覚えがある。(実際、契約書を作るには、第○条っていうのが作成していくうちにどんどん動くので、固定で入れないほうがいいに決まっているのだが、その当時はやりかたがよくわからなかったのだ)

で、現在、企業に舞い戻って、『見栄え』が重要なプレゼン資料やら説明資料やらを作る必要性が当然増えたので、上記の本とにらめっこしつつワードと格闘している。パワーポイントの同じような本もないかなぁ・・・。

とはいえ、企業で仕事するならワープロがあればエディタはいらないかというと、そんなことはない。やっぱりここでも出願書類は取り扱うのだ。あまり数は多くないけど、オンライン出願もするし、閲覧申請もする。特許庁用のHTMLを作るなら、やはりワードは不向き。専用のマクロがいる。勝手につけられるタグがエラーを引き起こすからだ。

ということで、『秀丸エディタ』が欲しいです。と言ってみたら、なんとグループ内にライセンスが1本あまっていることが判明。なんだ〜、もっと早く言えばよかった。ここ半年、我慢してメモ帳を使っていたのだよ。

やっぱり、テキストだけが問題で、見栄え不要の文書作成をするならワープロよりエディタよね。と思うのだった。ワープロで作業すると、見栄えに意識が引きずられて困るんだな。

ビジネスリュックを愛用している。ショルダータイプや手に提げるタイプの鞄で1日過ごすと(といっても一日中抱えて歩いているわけではない)、てきめんに体がゆがむらしく、腰に痛みが出るので、やむを得ず重みが偏らないリュックになるのだ。

使っているのは、LAGASHAのSITEシリーズのビジネスリュック
3WAYのBYTEシリーズも以前使っていたし、夫はSITEの3WAYタイプを使っているが、結局ショルダーでは使わない上、3WAYタイプは大きいため、荷物を入れて持ち歩くと重すぎる嫌いがあって、今はリュックオンリーで落ち着いている。

最近はPCを持ち歩かないので、あまり重すぎてかなわないこともないのだが、少々小さいので、弁当を入れ、携帯マグを2種類もつと、他の持ち物はかなり制約される。とはいえ、つくりも機能も大変満足。

が、JCBのポイント交換の景品を見ていたら、アダプティックのビジネスリュックが出ているのを見つけてしまった。ほとんど今のと変わらないようにも見えたのだが、なんと二段タイプの弁当箱用のスペースが底部分に用意され、直接出し入れできる。これはポイント高い。似たようなコンセプトの鞄が2つあってもなぁ、とかなり迷ったのだが、やっぱり我慢できなくてクリックしてしまった。

ということで、昨日から新しいリュックで通勤している。今日は初めて弁当箱も専用スペースに入れてみた。男性用の大きなものを想定しているらしく、私の弁当箱ではかなりスペースが余るが、今までのように全部ものを空にした状態で上から底に入れるよりずいぶん使い勝手は良い。背中の通気性もなかなかグッド。ひとつ欠点は、A4サイズの書類ホルダーがないこと。これは必ず持ち歩くので、ポケット状のところに入れて安定させたい。この点は、LAGASHAの方が使いやすいね。鞄自体の重さは、アダプティックの方が多少重いらしいのだが、かえって軽く感じるのはなぜだ?入れっぱなしのモノたちは全部移動させたつもりなんだが。

しばらくは、両者の使い勝手を比べつつ、レギュラーを決めることになろうか。それにしても、決まったら2つ持っている必要はなくなるよなぁ。かといって、人にあげられるほど状態が良くない。ううむ。

しかし、使いやすそうな機能性バッグに相変わらず弱いのだった。ショルダーや手提げがいける体だったら、もっと色々鞄を買ってしまっていそうだ。リュックだと、希望スペックを満たすものが非常に少ないのでこれくらいで済んでいるともいえる。

ワーク・ライフ・バランスを保つしくみ

仕事が楽しい。(すみません唐突で)

以前、コーチングを受けたときにキャリアの棚卸しをし、自分がどんな仕事のときにモチベーションが上がるかを検討した。そのときに出てきた大まかな結論としては、仕事の種類というよりは環境づくり・システム作りをするのが好きだということだった。

そして、現在の私の仕事の半分は、この手の環境・システム作りである。おまけにシステムが整っていないのでやることは山積み、どれも早急に整えて実務ルーティンが回るようにしなければいけないから優先度も高い。

事務所勤務の頃も、この手のシステム化は必要性を感じて手を出していたけれども、いかんせん業務の内容が明細書を書いてそれによって売上を立てるという労働集約的なもので、しかも直接部門で売上を立てるのが必須だから、間接業務も甚だしいこの手の仕事は後回しにされ、評価もされないという悲しい状況だったのだ。実際そんなことをやっていないでもっと書いて売上を上げろと何度言われたことか。まあそのあたりが転職に踏み切らせた一因な訳だが。

現在は直接売上を立てるプロフィットセンターではなく、事業支援部門であるから、しっかりその機能を果たすためにシステム作りは欠かせない。今までほとんどシステム作りがされておらず、人に頼っていた結果いろいろなところに問題が出てきているので、それを正常に回るようにするために各種の施策が必要なのである。

そんなふうに、好きな種類の仕事であって、さらに今までの経験が直接生かされる得意分野でもあるから、冒頭の『仕事が楽しい』状況になるわけだ。するとどうなるか。いくら仕事をしていても飽きないし、仕事の方もそんな状況なので尽きない。きっと放っておいたら連日深夜残業になってしまうだろう。ワーカホリックだな。

しかし、現実は、小学生息子が二人いて、夫も製造業で営業企画という激務系のため、毎晩家を空けるわけにはいかない。自分一人なら家がどんな状態でも後回しにできるし、外食や中食ですませたって誰も文句は言わないが、育ち盛りの子どもを抱えてそんなわけにもいかない。食事にも気を配って、家事を仕込んで生活を回すということがどういうことかを理解させる必要がある。いつまでも若くはないので自分たちの健康にも気を配る必要があることにも気づく。

というわけで、実際の生活は、延々と仕事をするわけではなくて、火曜と木曜は定時30分後の電車に乗って帰宅し、夕食を整え、子どもたちと過ごす。子どもが寝る頃にジムに出かける。その他の日は予定が入れば夫と調整、入らなければ同様に早々に帰宅する。毎日家族揃って夕食が取れればよいのだが、なかなかそうも行かないので平日は当番制になっている。夫婦二人とも夜に予定が入れば子どもたちだけで夜を過ごしてもらうが、これも頻度が上がりすぎると問題が多いので2週間に1度まで。

仕事のおもしろさが昂じてもっと思い切り打ち込みたいと思うこともしばしばあるが、きっと子どもたちがいてそのための時間があり、そのような時間を過ごすことから自分のために必要な他のことにも目が行き、自分のためにも時間を使うというワークライフバランスが取れているのだろうと思う。逆に言えば、そのような枷のないところで、現在の日本の労働環境(非正規社員が多く、正規社員は長時間労働の激務が蔓延)では、自覚的にバランスを取るのはかなり難しいのではないだろうか。今話題の『婚活時代』でも取り上げられたが、結婚していないビジネスマンは他にやることがないので延々と会社に居続けてだらだら仕事をするので経営者が困っているとか。時間がいくらでもあると思うと(=残業すればいいと思うと)確かに効率は上がりにくい。
「婚活」時代 (ディスカヴァー携書 21)「婚活」時代 (ディスカヴァー携書 21)
(2008/02/29)
山田 昌弘白河 桃子

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忙しい人が、目の前のタスクではなくて長期的に必要なことをしっかり実行するためにはそのための時間を予め取り置きしてしまうというのはよく言われること。そうせざるを得ない環境を自分で用意するというのが重要なのだろう。

それでも事務所勤務で裁量労働だった頃と比べると、朝9時前から午後6時まで必ず会社にいる必要がある現在は、仕事に集中して使える時間は十分長い。以前は、朝の始末をしてから出かけて出社は9時半頃、お迎えに間に合うように遅くても午後5時には帰宅していた。その代わり仕事は毎日持ち帰って午後10時から12時くらいは毎晩明細書を書くなり赤入れをするなりしていたのだが。今は朝が早いので11時には就寝しないと寝不足で辛くなる。11時に寝ようと思うとほとんど持帰って仕事をするのは無理。ここで時間を無理矢理取るよりもしっかり眠って冴えた頭で会社にいる間に集中してこなした方がよいだろう。

目下の懸念は、自分の時間の使い方。色々あってオケ活動が長期休業中。このまま行くと楽器も弾かなくてフェイドアウトしてしまいそう。音楽を楽しむのは人生の楽しみの大きな部分を占めているはずなんだけどなぁ。

インハウス・ロイヤー

10月号のBusiness Law Journalの特集は、「弁護士・法科大学院修了者の採用 企業内弁護士は大幅に増加するか」である。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2008年 10月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2008年 10月号 [雑誌]
(2008/08/21)
不明

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この雑誌、企業法務に焦点を当てている珍しいアプローチでなかなかおもしろく、あちこちのブログでもよく取り上げられている。つい毎号買っているので、とうとう今月号から定期購読にした。実を言うと会社で買ってくれないかな〜と思ってうろうろしていたのだが、ちょっと予算とターゲットの問題で難しかった。って結局社内回覧してるんだけども。

現在、企業内弁護士は300人弱らしい。25,000人の総数から見ると1.2%といかにも少ないが、この3年で倍増しており、新司法試験合格者の就職難が取りざたされ、さらにコンプライアンスだ内部統制だと騒がれる現在、『大幅』かどうかはともかく増加していくことにはなるだろう。

対して、弁理士の総数は約7800人。企業勤務の弁理士は約1400人で17.5%。弁理士試験は司法試験ほどの難易度ではないから、受験浪人が少なく、働きながらの合格者が多い。中でも知財部に勤務しながら合格して登録するケースが特許事務所勤務と並んで数としては昔から多いのだと思う。司法修習のように退職を余儀なくされたりもしないので、そのまま勤務し続けるケースがほとんどではないか。

昔は社内で合格すると数年お礼奉公をして独立し、元の勤務先をクライアントに持つという形が多かったように思うが、現在は弁理士の数も激増したこともあり、そのルートがみんなが通る道だとは言えなくなっている。以前は業界内の転職も企業から特許事務所の一方通行だったものが、最近の知財強化の流れでどこの会社も人員増加、中途採用枠を増やしており、特許事務所から企業に入るケースも多くなった。かくいう私もこのパターンだが、地元でも弁理士が特許事務所から企業に入る話はちょくちょく耳にする。

企業法務部が弁護士を採用する場合、その待遇が悩ましいところのようだが、弁理士の場合、一般社員とまったく変わらないのが通常だと思う。資格手当てがつくところもないではないが、あまり多くはない。弁理士会の登録費用、会費を会社負担にしてもらうのが精々ではないか。まあ会費を自腹を切って納めるのはなかなか個人には辛いので、それだけでもありがたいといえなくはないが。

弁護士のようにプロボノ活動が義務付けられてもいないので、弁理士会の公的活動には企業勤務だと出してもらえないのが普通だと思う。会社の利益につながらないので、少なくとも勤務時間中の活動は認められず、有休をとって参加とか、週末だけ参加という形が多い。なので、弁理士会の会務には圧倒的に事務所の経営者・事務所勤務弁理士が多い。

弁理士としての外部活動を通じてネットワークもできるし専門知識も広がるし、もう少し考慮してもよいのではないかという気もしないではない。実際、今回のBusiness Law Journalでは、弁護士会での活動をそのように評価している声が多かった。しかし、知財業界にはなんといっても『日本知的財産協会』(知財協)という企業知財部門の団体があり、これが強力なのであまり弁理士の外部ネットワークには期待されていない。というか、視点が違うので役に立たないと思われている気がする。

確かに視点が違うので、どちらかというと両方に足を突っ込んでおいたほうがバランスが取れていい気もするんだが。まあ、当社は小さいこともあるし、フットワーク軽く色々首をつっこんで井の中のなんたらにならないようにしよう。

特許法研究会

2ヶ月に一度開催される「特許法研究会」に参加している。地元の弁護士・弁理士で構成されるずいぶん古くからある研究会だ。

8月度の研究会は、お盆明けということもあって軽いテーマが2つ。関税法の輸入差止と、今年4月に出た最高裁判決「ナイフの加工装置事件」(審理を不当に遅延させる対抗主張(訂正審判の主張)による権利行使の制限)。

関税法の輸入差し止めは、専門委員として関わった弁護士さんの話。あまり関わることが少ない水際差止だが、平成18年・19年改正により、関税定率法でなく関税法内に輸出入の差止手続きが規定され、専門委員へ税関長から意見を求める規定ができた。

関税法では、輸出入してはならない貨物として、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成権を侵害する物品、不正競争防止法2条1項1号〜3号の行為を組成する物品が挙げられている。特許権者等・不正競争差止請求権者は、税関長に対して、そのような貨物に該当することを侵害の疎明をして申し立てることができる。

申し立てがあると、税関内部で侵害判断ができる場合(偽ブランド品など)は、そのまま内部判断で処理される。実際には、内部判断をするための弁護士(常駐なのか電話で飛んでくるのかはよくわからないが)が関与しているらしい。

侵害の疎明が十分かどうかの判断が内部で困難な場合は、専門委員(弁護士・弁理士)に委嘱される(弁護士2名・弁理士1名の3名構成が多い)。特許権・意匠権絡みの場合は、ほぼ専門委員委嘱になる模様。

申し立ては、侵害品の輸出入者(相手方)が判明していなくても行うことができる(相手方に反論の機会を与えなくても良い)。但し、不正競争行為の場合には、相手方に通知をする実務になっているとのこと。つまり、特許や意匠の場合には、相手方が判明していなくても申し立てを行い、専門委員が侵害だという意見を出してくれれば、そのまま税関長が受理決定をし、全国の税関に差止状が回ることになる。

弁護士としては、こんな相手方軽視の手続きでいいのかという疑問が大きいが、心証としては、中国からの偽者輸入ならこれでもいいか、という方向につい傾くらしい(笑)。今回のケースは、意匠登録よりも実際のモノの方に輸入予定品がそっくりといういかにも模倣品だったらしく、専門委員の中でもこれを侵害品とするかどうかは意見が割れたそうだ。不正競争防止法1項3号の申し立ての追加も考えられるが、その方法をとると相手方を特定して反論の機会を与える必要があるとのことでとらなかったらしい。

ということで、日本企業内の知財実務者としては、たとえば中国からの模倣品対策として水際差し止めを考えるのであれば、不正競争防止法の2条1項3号(デッドコピー)よりも意匠権の登録がある方が使いやすいと言える。やっぱり製品の寿命が短くても意匠は取っておいたほうがいいか・・・。

「ナイフの加工装置事件」は、訂正審判の請求と取り下げを繰り返してついに認容審決を手に入れたものの、審理遅延目的とされて上告が却下されたもの。弁理士としては、訂正審判は非常に厳しくて、なんとかぎりぎりで認容されるところを狙いたいわけで、それを探るのに請求と取り下げを繰り返すというのは、侵害事件で難しい場合であればなおさら実務的にはうなずけるところ。しかし、昨今の審理促進の流れの中では、このような厳しい判断になってしまうのだろう。

それにしても、上告は却下されたが、特許権は訂正されて生き残っているわけで、特許権者としてはこの特許権に基づいて新たな訴訟提起も可能なわけで。その場合の損害賠償請求は、今回棄却された訴訟の事実審の口頭弁論終結以降に限られるのか、もともとのものも対象にできるのか。今回の判決の既判力はどこまで??などという議論になったが、これは意見が裁判所によっても割れそうだという結論になった。

雑談に近い議論で盛り上がったが、このような他の弁理士・弁護士の現場の感覚を色々聞いておくのは大変参考になる。
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